株式投資とその周辺

初心者の勉強記録です

ふりかえり:2021 仕事編

 2021年の大きな出来事は3つ。職場の移動、恋活の終了、株式投資への没頭。職場の移動について、2021/1-3は600床級の大病院の救急科研修をしていた。新年度となり、100-200床の小病院の内科研修に勤務先が変更となった。

 これまで後期研修以降では医学的な指導を受けることはほとんどなく、自身でガイドラインやdynamed plusを引いて勝手に実践していくような状態で、大規模病院での研修では医学的な指導やdiscussionがあって新鮮だった。私は中規模病院の総合診療科の所属であり、そしてそこはどちらかというと指導医メンバーも家庭医療よりの人々が多かった。したがって、不明熱ハンターや意味不明の疾患の診断家はおらず、その一方で環境的には僻地の唯一の総合病院であったのでいったんは色々な初診・救急患者がその病院に来るためにそういった病院総合診療医的な仕事や内科救急医としての仕事も求められていた。飛び道具的なものは今後自分で扱う予定はないまでも一般重症患者の診療について標準化された管理を自分ができているのかイマイチよく分からないこともあり、3か月間の救命センターでの救急科研修は有意義だった。

 小病院研修になると、不足する点が多々あり自分にとっての普通の診療を行うことに難渋した。例えばアンチバイオグラムが存在しないので、抗菌薬はメクラで行くしかなかった。(例えば尿路感染症を疑ってグラム染色で腸内細菌科細菌らしいGNRが見えている場合でも、ESBLがどの程度この地域ででるのか不明で初手からカバーするべきか不明だった。今も不明である。→とりあえずCMZを初期治療にしている、など。そもそも最近はもう自分でグラム染色自体をしなくなった。それは尿路感染という病名がついているが本質的には老衰だという状況があまりに多いからである。)またある時にはインスリン分泌がほぼ枯渇したような高齢患者の病棟での血糖コントロールについても、朝・昼・夕で異なる値をスケールで使用することができなかった。(大体朝>夕>昼の順にBolusの必要量が多くなることが多いと思うのだが後に固定うちにすることを念頭に食事毎に必要なbolusと食後に高血糖の補正のための即効型の注射をしたいところを、毎日7検するのも負担になると考えて、食前のインスリン注射で食前の高血糖の補正と食事による血糖上昇分の補正を合わせて行うようにすることがこれまで多かったのだが、それだと各食毎にスケールが変わってしまうために対応が困難とされた。)他には、持参薬の終わる日数がバラバラであった場合に指示簿に持参薬継続と記載してあっても主治医が処方忘れするとしばらく内服がストップしてから連絡が来ることがままあった。これまで明らかな定期処方の抜けは代行で薬剤師さんの方で入力してくれることが多い環境にいて(甘えだと言えばそうだけど)必要な処方が抜けていても自分が気が付かないとずっと内服しないまま過ぎていくというシチュエーションがADHD傾向の強い自分にとってかなり大変であった。20人前後の病棟受け持ち患者がいて、その誰もがポリファーマシーで100種類以上のバラバラに終わるそれぞれの薬剤を把握するのは不可能だと思う。さらにせん妄に対して抗精神病薬を使用すると薬局から不適切な使用であると連絡が来ることもあった。何なら医局での会議で最近使用が増えていて控えるべきとまでお達しがでた。せん妄と言えばそのほかに、せん妄の不穏時の指示が第一世代抗ヒスタミン薬が頻用されていた。ただでさえ促進因子になりそうで、高齢男性に使って尿閉にでもなったらどうするつもりなのだろう。また、鎮痛・鎮静に関してもひどいもので、挿管されているのに無鎮痛・無鎮静で患者が苦しむ姿を夜間病棟で見たこともあった。あまりにむごいと思う。さすがにそこまでではないにしても、鎮静のみで挿管される患者が一般的な状態であった。このあたりは常勤スタッフの問題であったが、外勤の一般内科医の質が極めて低いことも問題であった。初診外来の診察を任されているのに、熱が出ている患者は診ませんと話して常勤医に投げつけてくる医者がいた。質以前の問題である。胃腸炎にルーチンで抗菌薬を処方している医者もいた。(なぜかFOMを好む者が多いが、たまにLVFXがいてサルモネラ菌血症でも疑ったのかなと。)死んでもおかしくない急性腹症を診療所に逆紹介していた医者もいた。また低血糖患者の血糖コントロールを強化したり、緊急性のあるレベルの高K血症に対して維持液を大量に入れてみたり。またある時は生化学の血液検査とCTだけあるいはCBCCRPの血液検査とCTだけといういずれかの組み合わせで1行のカルテだけ書いて救急当番に投げつけてくる医者もいた。他にもいろいろあったけれど、共通するのはそのすべてが万死に値するということだ。

 そういったことに加えて、病棟患者の半分程度が老衰患者であり、目に見えるやりがいがないことも問題だった。医療の質が低くてもアウトカムが変わらない環境であれば、アンチバイオグラムを作るべきだとか、高齢者のせん妄や不眠に対しての指示簿の変更を行うべきだとか、そんなことを言っても仕方がない。そもそも臨床倫理の4分割なんてやってる場合ではなく、目の前の無鎮痛で苦しむ挿管患者を助けるべきではないか……??

 こんな環境であったので、モチベーションを喪失するのは一瞬であったし、むしろ再就職のためにエムスリーキャリアに登録していた。しかしそれでも辞めなかったのはひとつ学年が上の専攻医氏が夜間の主治医への電話の適正利用について看護師さんや医局の間を取り持ってくれたり、また指導医も申し送りもなく1行カルテでダンクシュートしてくる外勤医師に対してせめて申し送りをするようにというルール作りをするなど労働環境が改善されていった状況があったからだった。結局のところ大した熱意のない私は文句は言うものの何かを改善しようと動くほどのやる気もなかった。(しかし、改善するより改善されている職場に転職した方がずっと楽なので仕方がない。)

 良かった点があるとすれば、ある程度急性期~慢性期の定期外来につなげて継続的な診療をできるケースもあった点だ。また、訪問診療の閾値が低い点、療養病床も併設されていたので行き場がないというだけの理由で飯が食べられない限界の寿命高齢者に中心静脈栄養を選択せざるを得ないといったことがなくなった点である。

 来年も引き続き同じ病院で仕事することとなった。業務改善へのモチベーションがあまり上がらないのがネック。なるべく座学の機会も増やして流れ作業に終わらないようにしたい。楽しいだけの仕事なんてなかなかないので仕方がないのかもしれない。お賃金はそこそこ満足しているし。